弁護士コラム

この記事の
監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
  • その他
    個人
    2024年04月09日更新
    出演したAV動画は削除可能? AV新法とは何か?

    出演したAV動画は削除可能? AV新法とは何か?

    令和4年6月、「AV出演被害防止・救済法」(AV新法)が成立しました。この成立により、アダルトビデオの出演契約をしてしまった後でも、無条件で契約を取り消すことができ、過去に撮影されたAV作品の削除や販売の差し止めを求めることが可能になりました。

    軽い気持ちでAV作品に出演してしまい、後悔しているという方も、このAV新法により救済される可能性があります。今回は、AV新法の内容についてベリーベスト法律事務所の弁護士がわかりやすく解説します。
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1、出演したAV作品(動画)の削除は可能

過去に出演したアダルト動画については、一定の要件を満たす場合には、削除や販売の差し止めを求めることが可能です。

  1. (1)公表されているAV作品は削除や販売差し止めが可能

    AV新法では、過去に出演したアダルト動画であっても、以下のいずれかの要件を満たす場合には、AV作品の削除や販売差し止めを求めることができます。


    • 出演契約公表期間外で映像が公開されている
    • 契約の取り消し、解除をしても映像が公開されている
    • 出演契約に基づかずに映像が公開されている
    • 出演契約の内容とは異なる映像が公開されている


    また、プロバイダにAV作品の配信停止を申し出た場合、通常であれば、プロバイダから情報発信者への削除同意照会に7日間かかるところ、AV新法では2日間に短縮されるため、迅速に削除することが可能になりました。

  2. (2)アダルト動画削除の方法

    弁護士に依頼して、アダルト動画を削除する場合には、以下のような流れになります。

    ① 弁護士に相談・依頼
    ご自身が出演するアダルト動画の削除を希望する場合には、まずは弁護士に相談します。
    依頼する場合には、弁護士から事前に費用の見積もりが提示されますので、それに納得された場合には、正式に依頼となります。
    なお、弁護士に相談・依頼する場合には、以下のような費用がかかります。


    • 法律相談料
    • 着手金
    • 報酬金


    ② メーカー・販売業者や動画サイトに削除を求める書面送付
    依頼を受けた弁護士は、依頼から数日~2週間程度で、メーカー・販売業者や動画サイトに対して、アダルト動画の削除を求める書面を送付します。

    ③ 削除請求の交渉
    書面が届いた後は、AV新法による削除対象であることをメーカー、販売業者、動画サイト側に伝え、削除請求の交渉を行っていきます。

    ④ 削除完了
    メーカー、販売業者、動画サイトがアダルト動画の削除に応じてくれた場合には、事件は解決となります。解決までの期間は、事案にもよりますが、数日~数週間程度が目安です。

2、AV新法とは何か? 法律の内容を解説

1章で出演したAVの削除は可能であることはお伝えしましたが、では、このAV新法という法律はなぜできたのでしょうか? 背景や理念を説明していきましょう。

  1. (1)AV新法の成立背景・理念

    AV出演に関しては、以前から以下のような被害が訴えられていました。


    • AVに出演することになったが、怖くなって断ろうとしたら「まさか今から断らないよね?」と言われ、AV出演を断ることができなかった
    • アイドルを希望してタレント事務所に所属したのに、まわされた仕事がAVの撮影だった
    • 交際相手との性行為の動画がAVとして販売されていた
    • 撮影された映像が知らない間に出回ってしまい、消すことができない
    • AVに出演したことが家族、友人、職場に知られないか心配


    このようなAV出演に関する深刻な被害が社会問題となっていることを受け、AV出演契約の被害を防止して、被害者を救済する目的で制定された法律がAV新法です。

    成人年齢の引き下げに伴い、18歳~19歳の出演者がAV作品に出演させられる被害の増加が懸念されることから、議論が始まってからわずか1か月半の間で制定されました。

    AV新法により、AV作品への出演者の権利が保護され、自己の意思により出演を決定することが可能になりました。

  2. (2)AV新法で決まったことは主に3つ

    AV新法では、AV出演者の権利や利益を保護するためにさまざまな制度が定められていますが、重要なポイントとしては、主に以下の3つが挙げられます。


    ① 動画削除が迅速にできること
    AV新法では、被害拡散防止の仕組みとして、削除や差止請求権が定められ、プロバイダ責任法の特例として、削除同意照会の期間が短縮されています

    通常の場合には、プロバイダから情報発信者に対して、7日間の削除同意照会期間が設けられていましたが、AV新法ではこの期間が2日間に短縮されています。
    これにより、AV動画の削除を迅速に行うことが可能になりました。

    ② 契約締結のルールが設けられたこと
    契約締結時には、映像制作者には、出演契約書の作成・交付および契約内容の説明義務が課されます。また、撮影禁止期間や映像の公表禁止期間、無効・取消解除に関する特則などの契約締結のルールが設けられました。

    これについては、詳しくは3章で説明します。

    ③ 違反者の罰則が設けられたこと
    出演者からの契約解除を妨害するために、違約金を請求したり、脅したりした場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

    また、出演者に対して、契約書を交付しなかったり、契約内容の説明をしなかったりした場合には、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。

3、AV出演の契約自体を取り消すことも可能

過去に出演した作品を削除したいという希望だけでなく、直近でアダルトビデオの出演契約をしてしまった方も、AV新法により救済される可能性があります。

  1. (1)出演前に詳しい説明がなければ契約は無効

    AV出演契約を締結する場合には、AV作品ごとに契約をしなければなりません。出演するAVが特定されていない場合には、無効になります。

    また、AV出演契約は、書面または電子契約書などで締結し、すみやかに交付しなければなりません。契約書には、以下の項目が記載されている必要があります。


    • 契約当事者に関する事項
    • 契約締結日時、場所
    • AV作品に出演すること
    • 撮影予定日時、場所
    • AV作品の具体的内容
    • 撮影の相手方に関する事項
    • 公表の具体的方法、期間
    • 公表者に関する事項
    • 報酬額と支払い時期
    • 公表する場所、ウェブサイト情報等


    さらに、AV出演契約締結時には、契約書のほかに、説明書面を交付して、AV出演契約の内容を丁寧かつわかりやすく説明しなければなりません。

  2. (2)1か月間の撮影禁止期間・4か月間の映像公表禁止期間が設けられた

    AVの撮影は、出演者が契約書や説明書面の交付を受けた日から、1か月間は撮影することができません。当事者間の合意により、この期間を短縮したとしても、それは無効です。

    また、AV作品は、すべての撮影が終了した日から、4か月間は公表することができません。
    このように契約後の撮影禁止期間と撮影終了後の映像公表禁止期間が設けられたことで、
    出演者の安全の確保と事前に映像の確認ができますので、望まない作品が公表されることを防止できます。

  3. (3)契約無効・取り消し・解除ができる

    出演する作品を特定しない契約や、契約解除を申し出た出演者への損害賠償を定めた条項は無効です。先ほど申し上げたように、書面交付義務や説明義務違反があった場合にはAV出演契約を取り消すこともできます。

    また、AV撮影に同意していたとしても、AV作品が公表されてから1年以内であれば、無条件でAV出演契約を解除することができます。契約を解除したとしても、出演者が損害賠償などの負担を負うことはありません。

4、弁護士に相談するメリットとは

ここまで出演したAVの動画を削除できること、新しい法律ができて出演者の保護が強化されたこと、直近のAV出演も取り消しができることをお伝えしました。この法律に基づき自身でメーカーなどと交渉することは可能です。しかしながら、弁護士に相談すれば、以下のとおり4つのメリットがあり、より安全にストレスなく、AV出演のトラブルを解消することができます。

  1. (1)お客さまのケースにあわせた解決法が提案可能

    軽い気持ちでAV作品に出演したことを後悔している方もいるかもしれません。AV新法の制定により、契約に無効・取り消し事由がなかったとしても公表から1年以内であれば、無条件で解除することができます。また、契約時に書面交付や説明がなかった場合には、1年を経過していたとしても契約を取り消すことができます。

    どのような解決方法を希望するかは、お客さまによってさまざまですので、相談を受けた弁護士が丁寧に事情をお伺いしたうえで、最適な解決方法をご提案いたします

  2. (2)お客さまの代理人となり手続きや折衝を進められるから精神的ストレスが減る

    お客さま自身で交渉をすると、メーカーなどから脅されたり、違約金を請求されるなどして、映像の削除に応じてもらえないだけでなく多大な精神的ストレスを被る可能性があります。

    弁護士に依頼をすれば、お客さまの代わりに、弁護士がメーカー・販売業者や動画サイトとの交渉を行うことができますので、そのような精神的ストレスは大幅に軽減されます。また、法的根拠に基づき交渉を進めることで、契約の解除や映像の削除など希望する解決方法を実現できる可能性が高くなります。

  3. (3)弁護士には守秘義務があるため、相談が外に漏れることはない

    AVに出演したという事情は、他人には相談しづらい内容です。しかし、弁護士には、守秘義務がありますので、弁護士に相談した内容が外部に漏れることはありません。相談したからといって依頼が必須というわけではありませんので、まずは気軽に弁護士に相談してみてください。

  4. (4)刑事告訴のお手伝いもできる

    AV新法では、違反者に対して罰則が設けられていますので、悪質なAV業者やサイト管理者に対しては、刑事告訴も検討しましょう。弁護士であれば、刑事告訴のお手伝いもできますので、安心してお任せください。

5、まとめ

AV出演契約の被害を防止して、被害者を救済する目的で、新たにAV新法が制定されました。AV新法により、同意のない動画販売や公表を止めることができるようになりましたので、AVに出演したことを後悔している、過去の作品を削除したいという方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。

この記事の監修者
萩原達也
弁護士会:
第一東京弁護士会
登録番号:
29985

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※記事は公開日時点(2024年04月09日)の法律をもとに執筆しています

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